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書評コーナー

季刊誌51号より

女言葉と日本語

女言葉と日本語

■中村 桃子 著 /岩波書店
 ■ISBN-10: 4004313821
 ■ISBN-13: 978-4004313823
 ■17.8 x 10.6 x 1.4 cm 256頁 価格800円(税別)


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女言葉は奥が深いことを本書から知った。いわく、「江戸時代、女房詞は上流社会の言葉とされ、奉公に上がった女子が市井に持ち帰った」、 「明治時代、女子学生が使い始めた『てよ・だわ・のよ』が文学にのって主流になった」、「女子学生を性の対象にしたのは彼女らを愛の対象とする西洋思想」 という。それら女言葉は、良妻賢母や性の対象という位置づけの固定化に寄与した。

平田篤胤以来の狂言的国学者は日本語の優秀性を主張した。「女言葉があるのは日本だけで日本語の優秀性を表す一例」と、 女言葉も選民意識を煽りたてる糧にされた。敗戦後の平和憲法制定で日本側は男女同権に激しく反対した。 男女(夫婦)平等は単に平等にするだけでなく、天皇を頂点とする家父長制の破壊を意味したからである。

古来、女は家刀自として家計を仕切り、嫁いでも自分の財産を持ち、家の財産相続権も有していた。 家父長制を創設して、それらを女から奪ったのが「女は男から作られた二級人種」という西洋文明に接した明治の識者である。 今、夫婦別姓に反対する背景には天皇制があり、明治以来の家父長制への復古願望がある。本書の視点は、民主主義と平和主義を 守る上で大切である。(た)