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書評コーナー

季刊誌48号より

科学者の不正行為 捏造・偽造・盗用

科学者の不正行為 捏造・偽造・盗用

■山崎 茂明 著/丸善
 ■ISBN-10: 4621070215
 ■ISBN-13: 978-4621070215
 ■21 x 14.8 x 1.8 cm 195頁 価格2400円(税別)


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10年前に刊行されたが、今回読み直してみて、その内容が全く古くなっていないことに驚いてしまう。 “不正行為は、精神に問題がある人物がいるから起こるのではなく、助成金獲得競争、先取権争い、ポスト獲得競争などから起こる、 Publish or Perish(発表するか、それとも死か)症候群によって起こる”ことの認識が重要であると筆者は言う。研究公正局を作り、 不正行為の監視とその予防に努めている米国の状況と、日本人研究者を含めた多くの不正行為の事例を紹介している。 超伝導研究での有名なデータ捏造事件を追ったNHK特集「史上空前の論文捏造」(中公新書にもなっている)も 同じ結論を下していたが、科学論文を審査する現在のレフリーシステムは、不正行為防止には無力だ。したがって、本書では 公的な機関の設立と研究者に対する教育が提言されているが、日本では何も対策がとられないまま10年が経過したのである。

なお、最近話題になった東邦大学麻酔科の准教授による1700件を超える論文捏造に関しては、 日本麻酔科学会の委員会報告書を参考にされたい。(き)