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書評コーナー

季刊誌40号より

恥と名誉—移民二世・ジェンダー・カーストの葛藤を生き延びて

恥と名誉—移民二世・ジェンダー・カーストの葛藤を生き延びて

ジャスビンダル・サンゲーラー著 亜久澤麻里子訳/解放出版社
 ■19.5cm x 13.5cm 336頁 価格2200円(税別)


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英国のインド人移民社会で生きる女性は、親の決めた結婚に従うことが当然とされる (その多くは夫となるインド在住男性の英国渡航手段となる)。本書の著者ジャスミンダルはそれに従わず 恋人と駆け落ちし、出産する。それだけでも「家の恥」とされる行為だが、その恋人がアウトカースト (カースト制度とはヒンズー教の浄穢観にまつわる身分制度で、アウトカースト=不可触民も含めた 階級分化が存在する)であったために「恥」は「上塗り」されることになった。 姉は暴力的な夫との生活に疲れ果て、焼死という結末を迎える。やがて著者は、 自分と同様の苦しみを抱える女性の存在に気付き、その支援に乗り出していく。

彼女らの抱える困難は、本書の副題ともなっている移民二世であること、 社会的・文化的につくられた性差であるジェンダー、カーストが増幅しあい、絡まりあって生じている。 日本で暮らす評者と、彼女らの課題が同じだとは決して言えないが、女性として、そして 部落出身者としての生きづらさを思い浮かべながら読み終えた。読後感を交換したくなる1冊。(み)