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書評コーナー

季刊誌39号より

性犯罪被害にあうということ

性犯罪被害にあうということ

小林美佳著/朝日新聞出版
 ■13.8cm x 19cm 211頁 価格1200円(税別)


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レイプ被害にあった実名手記で、著者は表紙にも写真で登場している。 被害に遭って一変した人生(観)について、ボーイフレンドとの恋や友情、家族との関係、 新たな男性との結婚と離婚などが淡々と描かれ、夫に抱かれセックスするたびに隠れて嘔吐することなど 癒やされない被害者の心身の叫びが伝わってくる。一方、被害者支援の意欲から著者が通った 心理カウンセラー養成学校の講師は、「(殺人は悪いという著者に)それはあなたの価値観で、 相手に押しつけている。それはだめ」と教える。

講師の言葉から、以前話題になった「『(若者から)殺人はなぜ悪いのか』と問われ、 答えられなかった“識者”たち」が思い起こされる。善意に解釈すれば、講師はカウンセラーの“心構え” を述べたのであろう。しかし、「殺人は個人の自由」としたことに相違ない。結論のみを示すと、 その講師は「味噌も糞も一緒」で倫理観の欠落した日本文化を表現したといえる。 “識者”が影響力をもつ社会は、被害者への二次被害も起こりやすい。そういったところで 被害者が声をあげる意義は大きく、著者の勇気と力性犯罪被害者に確かな力になると思う(た)