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書評コーナー

季刊誌36号より

「坂の上の雲」

「坂の上の雲」

司馬遼太郎著/文春文庫
 ■新装版全8巻 各巻638円(税別)


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主人公は松山出身の正岡子規と秋山好古、真之兄弟。この3人を軸に、「坂の上の青い天にかがやく一朶の雲」 をみつめながらひたむきに前へ進んでいく若者を描いています。明治という時代をともに生き抜こうとした青春を、 司馬遼太郎は10年の歳月をかけて渾身の力で書き上げたそうです。

中でも、結核を患い36歳という若さで生涯を終える正岡子規の生き方には惹かれるものがあります。 自由奔放で愛嬌のある子規は自由民権運動にはまり、激動に時代に「これからの日本はいったいどうなってゆくのか」 といつも仲間に熱く語っていました。結核という死の病も、彼の真摯な思いに一層拍車をかけたかもしれません。 子規は、病と闘い苦労を重ねながらも、才能を開花させた俳句に行きつくまで、様々なことに挑戦します。

現代の日本人は自分の国についてどこまで語れるのだろう。この本を読んでまず、そう思いました。 日本という国を知らなくてはいけない。日露戦争がテーマで難しいところもいくつかありますが、司馬遼太郎は決して 戦争を肯定はしていません。読めば読むほど心に残るものがある。そんな一冊です。(と)