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書評コーナー

季刊誌32号より

ミトコンドリアが進化を決めた

ミトコンドリアが進化を決めた

ニック・レーン:著、斎藤隆央訳/みすず書房
 ■18.8×12.8cm 476頁/価格3800円(税別)


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原題のPower,Sex,Suicide: Mitochondria and Meaning of Life が極めてよく本書の内容を示している。ミトコンドリアは、 ヒトの体重の10%を占める生命の発電所であり、性を2つに決定し、アポトーシス(細胞の死、不要になった細胞を取り除く巧妙な仕組み。 細胞が障害を受けて死ぬ壊死とは異なる)を司っている。

このような多彩な機能を、最新の一流論文をふんだんに引用し、映画「スターウォーズ」なども引き合いに出し、 わかりやすく解説している。この本を読めば、スタチン(メバロチンなど、本誌2号、24号参照)はミトコンドリアの吸収鎖 (ブドウ糖からATPを合成する系)の重要な酵素であるユビキノン(=コエンザイムQ)の合成を阻害し、細胞を障害することがわかるし、 巷にあふれている抗酸化物質をサプリメントとして摂ることの無意味さもよく分かる。

解説にあるように、健康であるためには、身体/精神活動を活発に行うことでATPを消費し、その需要がミトコンドリアの 分裂を促すようにすることである。(き)