(2021.12.28号)

『薬のチェック』速報版 No198

HPVワクチンの利益と害について

「性の健康医学財団」での講演記録を公開

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック) 浜 六郎

2021年3月14日、「性の健康医学財団」に招かれて、「HPVワクチンによる利益と害-エビデンスに基づく最新情報」と題して医師を対象に講演を行いました(Web会議方式で)。

その講演記録が、「性の健康」誌の増刊号として、このほど発行されましたので、発刊の言葉、目次、および浜六郎医師の講演部分[1]を公開します。


性の健康医学財団は、東京大学泌尿器科の北村唯一名誉教授が主催するもので、「性の健康」誌はその機関誌です。HPVワクチンを特集テーマにしたのは今回の増刊号で2回目です。


1回目の特集は、HPVワクチンの積極勧奨が中止になった翌年(2014年)11月に千葉県柏市で市民講座として実施された講演会の内容を中心にまとめられたものです。その発行の言葉と、浜の講演内容[2]は、薬のチェックのホームページで読むことができます。今号とともに、合わせてお読みください。

目次


浜六郎の講演記録へ  スライドへ(記事中のスライドの誤りを一部修正済)

2回目の講演会では、英国おける疫学調査の最新の結果[3]がまだ発表されていませんでしたので、その点に関してコメントはしていませんが、それ以外の重要な疫学調査の問題点について詳しく指摘しています。

主な内容は、

  1. ランダム化比較試験(RCT)で、子宮頸がんの発生率から子宮頸がんの減少を証明することは不可能であり、観察研究が必須である。しかし、観察研究には、健康者接種バイアス(healthy-vaccinee effects)によるバイアス(交絡バイアス)が付きまとう。
  2. 25歳以上を対象にしたRCTの総合解析でワクチン群の総死亡率はプラセボ群の約5倍であった。
  3. 若い女性約7万人を対象にした名古屋調査の分析で、接種後に杖や車イスが必要になった人は非接種者に比べて47倍、簡単な漢字が思い出せない25倍など深刻な状態が示された(健康者接種バイアスを補正するために接種前の症状で補正した結果)[1]。
  4. 子宮頸がんを減らすことができたとの観察研究の結果はすべて健康者接種バイアスがある。これを補正すると、フィンランド調査[4]でもスウェーデン調査[5]でも有意の差はなくなる。したがって、ワクチン接種によって子宮頸がん減らすことができた、とのエビデンスは崩れた。 (なお、これらの結果は、英国の最新の調査結果も含めて速報199で詳しく述べる)。

参考文献

  1. 浜六郎、HPVワクチンによる利益と害-エビデンスに基づく最新情報、性の健康2021:20(4):41-59.
  2. 浜六郎、HPVワクチンの作用と害反応について、性の健康2015:14(1):46-59.
  3. Falcaro M, Castañon A, Ndlela B et al. The effects of the national HPV vaccination programme in England, UK, on cervical cancer and grade 3 cervical intraepithelial neoplasia incidence: a register-based observational study. Lancet. 2021 Dec 4;398(10316):2084-2092. PMID: 34741816. doi: 10.1016/S0140-6736(21)02178-4
  4. Luostarinen T, Apter D, Dillner J, et al. Vaccination protects against invasive HPV-associated cancers. Int J. Cancer 2018;142:2186-2187. PMID: 29280138 doi: 10.1002/ijc.31231.
  5. Lei J, Ploner A, Elfström KM, et al. HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer. N Engl J Med. 2020 Oct 1;383(14):1340-1348. PMID: 32997908 doi: 10.1056/NEJMoa1917338.

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