(2021.3.31号)

『薬のチェック』速報版 No193

COVID-19用ワクチン:

クモ膜下出血で死亡2人

2度あることは3度ある可能性大

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)編集委員会

はじめに

厚生労働省(厚労省)は3月26日、ワクチン副反応検討部会と医薬品副作用調査会の合同部会で、COVID-19用ワクチン(ファイザー社製)を接種後、2人の死亡例の報告を受けたとの情報を公開しました。

それと同時に3月21日までに、約58万回接種が行われ、アナフィラキシーの報告が181件あり、専門家の評価でブライトン基準(註1)で47例がアナフィラキシーとされたことも公表しました。

今回の速報では、2人の死亡例に焦点を当てて、当センターの評価を速報します。

註1:ブライトン基準:アナフィラキシーの診断基準として、一般的に用いられている。しかし欠陥がある。たとえば、極めて重症の気道閉塞症状で発症して速やかにアドレナリンが使用され、皮膚・粘膜症状がほとんどない例が除外されてしまう。

2人とも、くも膜下出血による死亡

症例1:
61歳の女性。
 基礎疾患は特になかったが、日頃から頭痛があった。接種当日も接種前後に頭痛を訴えていたが、2月26日接種。接種後15分間の経過観察中、異常は見られなかった。使用薬剤についてはアセトアミノフェン「200mg、4錠、使用理由:接種に伴う関連疼痛及び発熱」と報告されているが、「服用の有無は不明」とも記載されている。接種3日後の3月1日午後、出勤しなかったため、勤務病院から家族(夫)に連絡があり、夫が帰宅後に、自宅風呂場で倒れているのを発見して救急要請。午後5時ころに救急隊が到着し、心肺停止と死後硬直が始まっていることを確認。勤務病院とは別の病院に搬送し、午後6時~6時30分ごろ死亡が確認された。髄液検査により血性髄液を確認し、くも膜下出血による死亡と診断された。剖検は実施されなかった。
症例2:
26歳女性。
 3月19日ワクチン接種(1回目)。接種後、アナフィラキシー等なし。体調変化なし。3月22日通常勤務。3月23日夜勤だが出勤しなかったので勤務先病院が家族へ連絡し、病院職員も自宅へ。家族、警察、救急隊が午後5時15分頃到着し、死亡が確認された。検死により午前11時頃の死亡と推定された。勤務病院に午後7時48分に搬送され、全身CT実施。頭部CTで小脳左半球の小脳橋角部にかけて直径3.5cmの血腫を認めた。石灰化があるため、血管腫や髄膜腫の可能性や、脳動脈瘤の可能性が考えられた。脳幹への圧排が左背側からあり、周囲にくも膜下出血の広がりがあり、側脳室内への血液の流入を認めた。肺野では両側肺に中枢側を中心に肺水腫の所見があった。このため、小脳出血の脳幹部圧排、くも膜下出血等、脳出血を直接死因としたと診断された。

25~29歳女性のくも膜下出血死亡率は0.35人/10万人年

2人の死因がどちらも「クモ膜下出血」というのは、偶然の一致といえるでしょうか。珍しいことが連続して起こった場合、よく「2度あることは3度ある」といいます。これは、偶然とはいえず、因果関係がありうることを、経験的に言い表したことわざで、統計学的にも意味あることです

特に、26歳の持病もない健康な女性がくも膜下出血で死亡したというのは、偶然で済まされない可能性があります。おおざっぱな確率を計算してみましょう。

2019年の人口動態統計で、25~29歳の女性286万人中、くも膜下出血死亡は10人いました。10万人年あたりに直すと、0.35人となります。

ワクチン接種後は?

ワクチン接種後のくも膜下出血による死亡率はどうでしょうか?

2021年3月21日までにCOVID-19用ワクチンを接種した約58万人のうち、77%が女性と推定されます。この45万人のうち25~29歳の女性はその9分の1、約5万人と推定されます(註2)

註2:アナフィラキシーを起こした人は大部分が20代~50代なので、5歳毎に分けると8階級になる。それに61歳女性の死亡も報告されているので60代をひとまとめにして9階級が均等な人数として計算。

接種後4日間で1人死亡:184人/10万人年

症例2の26歳の女性は、3月19日から4日後に発症して死亡しました。接種後4日間の観察で1人死亡の死亡率(/人年)を計算しましょう。

5万人×4/365(日)=540人年の観察中に、1人のくも膜下出血死亡があったことになります。したがって、10万人年あたりでは184人です。

単純に184人と0.35人の比を求めてリスク比とすると、危険度は約500倍となり、統計学的にも有意です(p<0.00001)。

4日間の観察ではなく半年間観察したとしても、危険度は約12倍で、統計学的にも有意でした(p=0.003)。

くも膜下出血や脳出血は血圧上昇で起こる

くも膜下出血や脳出血は、脳の血管の分岐部に強い圧力がかかり、動脈瘤が徐々に大きくなり、ついには破裂して出血が起こります(図参照)。

図

「薬のチェックは命のチェック」、No26(2007年4月)「脳卒中」特集より改変引用

ワクチン接種後頭痛や局所の痛みで血圧は上がる

症例1では、日頃から頭痛をよく訴えていたとのことですが、ワクチン接種後にも頭痛があり、その他局所の痛みや、体調不良のさらなる悪化で、血圧が上昇し、ついには動脈瘤が破綻した可能性があります。

症例2では、頭部CTで、小脳左半球の小脳橋角部にかけて直径3.5cmの血腫と、その周囲にくも膜下出血の広がりがあり、血腫は動脈瘤の可能性が指摘されています。いずれにしても、ワクチン接種後の様々な不快な症状で血圧が上昇したことで、血管の破綻が生じた可能性が否定できません。

COVID-19では死亡0だがワクチンで1人死亡(20代女性)

さらに重要なことは、20代女性で、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)で死亡した人は、2020年1月以来、1人もいませんが、ワクチンを約5万人に接種して、4日目に1人が死亡した、という事実です。

死亡した2人はいずれも医療関係者です。接種前後の体調の異常に気付きやすいでしょうし、発見後の対処も素早いでしょう。しかし、今後、医療従事者以外に接種が広がるにしたがって、COVID-19による死亡よりも、ワクチンによる死亡が多くなる可能性を具体的に心配する必要がある、ということを示しています。


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