(2008.07.11号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No108

廣田班データはタミフルの異常行動発現を裏付けている

1.56倍 起こしやすい
24人に1人がタミフルで異常行動

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック) 代表 浜 六郎

7月10日、タミフルの副作用を検討している作業班は、またしても、「今回の分析ではタミフルと異常行動に関連は見つからなかった」とする中間報告を発表しました。

この調査は、1昨年から続いている研究班(横田班)から引き継いで、大阪市立大学公衆衛生学の廣田良夫教授が班長となって続けている、およそ1万人を対象にした大規模な調査です。

昨年末、タミフル服用者は、非服用者の半分しか異常行動を起こさない、という結果を出した同じ研究班です(『薬のチェック』速報No101参照)。

実際には、重大な間違いによって、本当は1.37〜1.7倍もタミフルが異常行動を起しやすいのに、半分になっていたのです。

今度はその間違いを修正するのか、修正するとすればどのような修正をするのかが注目されましたが、「タミフルを服用した患者およそ7500人のうち、異常な行動を起こしたのは12%、服用しなかった患者2200人余りでは13%で、割合にほとんど差はなかった。」というものでした。

その計算の根拠になった詳しいデータを入手することができたので、早速計算しました。計算の根拠となった重要な集計部分をPDFファイルで示しておきます(11日に掲載後、厚生労働省のホームページカラーのスライドが公表され、より詳細が判明し、廣田班の計算方法の詳細が判明しましたので、その結果に基づき12日にカラー版に変更するとともに、コメントを修正しました、また、「相変わらず関連を見つけられず」の部分もコメントを修正しました)。

その結果判明したのは、
タミフル処方群  13.0%(7586人中988人が異常行動)
    非処方群  8.8%(2129人中187人が異常行動)
差は4.2%でした。

この結果、24人に1人は、純粋にタミフルのせいで異常行動が出現したと考えられます(非処方群にも受診前に異常行動を起した子がいますので、非処方群もタミフル処方群と同様、分母からも分子からも、受診前に異常行動を起した子を除いています)。

オッズ比1.56(95%信頼区間1.32-1.84、p=0.0000001)

タミフルが異常行動を起しやすくなる倍率を「オッズ比」という指標で表すと、 1.56倍でした(オッズ比=1.56)。その95%信頼区間は1.32から1.84でした。

統計学的な検定で、タミフルを処方された人は、処方されなかった人に比べて異常行動を起しやすくなる、といって間違う可能性は、1000万分の1という低い確率です(p=0.0000001)。

したがって、「タミフルは異常行動を起しやすくする」といって間違いありません。

オッズ比は前回集計1.37より高くなった

前回の集計ではオッズ比は1.37でしたが、今回の方がオッズ比が1.56と増えています。これは、両群に共通して存在する受診前の異常行動発症者を両群から除いたためです。より差が明瞭になったということを示しています。

タミフル群からタミフル服用前の異常行動発症者を除き、非処方群から、タミフル以外の薬剤を服用する前に異常行動が発症した人を除いて比較すれば、その差(倍率)はさらに大きくなると考えられます。

そして、1日目に限って集計すれば、さらにずっと倍率が高くなることが予測できます。NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)では、以前からこの方法で集計する必要性を指摘してきましたが、廣田班では、そうした集計はされていません。

相変わらず関連を見つけられず

11日遅くになって入手できたカラースライドを元にすると廣田班の計算方法が判明しました。その結果、今回の廣田班の中間報告は、受診前に異常行動が出現した子を両群から除いただけで、その後の処理の方法は、12月25日の一次予備解析の方法と全く同じであり、根本的な誤りは訂正されていません。つまり、12月25日に公表した計算方法の間違いは認めていないことが判明しました。

したがって、今回の計算方法も、間違っていますので、いずれ訂正をしなければならなくなるでしょう。

それでも、今以上対策をとらなくてよいようにするには、「関連を見つけられなかった」という中間的結論で十分です。このように提示しておけば、マスメディアは、「関連を見つけられなかった」を、「因果関係が否定された」ととれるように報道するからです。

関連見つけられず対策放置は因果関係否定と同じ

関連を見つけられず、対策が放置されることは、因果関係を否定し、対策をとらないことと実質的には同じ効果となります。

本年1月15日、薬害C型肝炎の和解に際して、福田康夫総理は「薬害を繰り返してはならない」「再発防止に向けた医薬品行政の見直し」を、舛添要一厚生労働大臣は「薬害は二度とあってはなりません」「医薬品行政の見直しに取り組み、再発防止に向けた具体策を検討してまいります」と異口同音に明言され、3月に基本合意書がかわされたことは記憶に新しいことです。

さらに、「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」が開催され、その場でも、舛添要一厚生労働大臣は、最終責任は厚生労働大臣が持つことを名言されています。

しかし、タミフルでは、明瞭に関連が証明されているのに、相変わらず「関連が見つからない」として、今以上の規制はされません。薬害は拡大するばかりです。

幸い、2007/08年の冬は、インフルエンザの流行そのものが小さく、また、10歳代への原則禁止の措置もあり、タミフルの使用自体も減少しました。しかし、今後はどのように大流行するかも分かりません。

因果関係を「否定できない」ともせず、無策のまま過ぎると、これまでの薬害同様、被害は拡大するばかりです。


市民患者が「ほんまもん」の情報を持つことが真の改革につながる
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