(2008.06.24号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No107

タミフルによる突然死・異常行動死:
英語論文・要望書を関係者に送付

翻訳完全版も公開しました

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック) 代表 浜 六郎

タミフルによる害とその因果関係および発症のしくみを総合的に考察した英語論文が、薬剤の危険と安全に関する国際医学雑誌(International Journal of Risk and Safety in Medicine)の最新号(2008年4月)に掲載された[1]ので、その原文全文(PDF版)要約(翻訳)を先に公開していましたが、今回は、翻訳完全版を掲載いたします(正誤表(日本語)正誤表(英語)あり)。

「二度と薬害を起こさない行政の舵取りをしっかり行いたい」と述べている舛添要一厚生労働大臣をはじめ、医薬品の安全にかかわる国の関係者(厚生労働省薬事・食品衛生審議会 薬事分科会安全対策部会安全調査会委員ならびに、医薬品メーカー(中外製薬)に対して、因果関係を認めるよう、また、重要資料の開示を拒否しないよう、要望書をつけて、論文の原文全文翻訳完全版とともに送付しました。

また、安全対策部会安全調査会参考人、作業部会疫学調査研究班(廣田班)副作用・感染等被害判定部会などの各委員や研究班員には、それぞれ送付状をつけて厚生労働大臣への要望書とともに論文の原文全文翻訳完全版を送付しました。

これまでNPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)では、厚生労働省や専門家、製薬企業の見解とは異なり、タミフルによる害とその因果関係があること、発症機序などについても機会あるごとに公表してきました。今回の論文は、それらの内容を体系的にまとめ、英文で公表したものです。

今回公表した論文は、英文のため世界に発信できるという強みのほか、これまでの論文や資料にはない、以下の重要な3点を特徴としています。すなわち、タミフルを使用後に死亡あるいはかろうじて死を免れた複数の症例(訳註:追加2人を含め10人)を報告した初めての原著論文であることです。第2に、タミフルの害反応の全体像を総説した初めての論文であり、第3に、タミフルの害反応の全体像のそれぞれについて因果関係とその発症機序を総説した最初の論文です(3.13. What this paper adds to earlier reports": pp30-31、訳文本稿における新知見p28より)。そのため、引用文献103件、32頁におよぶ大部のものとなっています。

編集長のCJ van Boxtel教授は、巻頭論説でこの論文を評して以下のように述べています。

「私たちはこの記念すべき合併号(註:20年目)に、オセルタミビルの安全面について、初めて徹底的に総合レビューした論文(the first in depth review of the safety aspects of oseltamivir)を特筆することができたということを祝したい。オセルタミビルの危険/益比の分析のために、これはタイムリーなレビューである。特に現在、米国をはじめ多くの国々は、鳥インフルエンザから新型インフルエンザのパンデミックが起きる危険性に直面しているとの考えから、オセルタミビルを備蓄しているからだ。」

「オセルタミビルのインフルエンザAに対する治療の有効性は十分かもしれない。しかし、安全に関してはどうだろうか? 嘔気と嘔吐が最もよく報告される有害事象であり、ロシュ社は危険な副作用に関しては完全に否定している。しかしながら、オセルタミビルが人によっては精神神経系の副作用を引き起こすかもしれないとの指摘がある。主に10歳代に関心の焦点が当てられているが、成人でも幼児でも問題例が報告されている。」

「2007年には、厚生労働省は、オセルタミビルを10歳〜19歳には原則禁止の措置をとった。また2006年11月には、米国食品医薬品局(FDA)は、オセルタミビルの添付文書を改訂し、警告として、せん妄や幻覚症状、あるいは、それらに関連した(異常)行動などが起こりうることを加えた。これらの、時には死に至る神経毒性に関する詳細な記述を、このジャーナルの今号において読むことができる。」

Boxtel編集長は、以下のように結論。

「これらすべてを考慮に入れた場合、必然的に、次のような質問が結論とならなければなりません。『(競馬で)私たちは欠陥のある馬に賭けるのか?』」

先日、タミフルの作業部会が新たに実施した臨床試験と動物実験で因果関係を否定する結果を出したとの報道があり、疫学調査結果を待って最終結論を出すとも報道されました。

しかし、今回の英文論文の内容として当センター(薬のチェック)が機会あるごとに発信してきた内容については全く考慮されていませんし、報道もされません。

また、臨床試験では異常が出るはずもない健康人の、しかも、これも異常が出るはずのない心電図で異常がなかったからタミフルで異常は起きない、と言っています。さらに、動物実験では、タミフルで多数が死亡したことが伺われる実験なのに、各群に何匹使って何匹が死亡したのか、つまり分母も分子もないデータで、「問題なし」としているのです。しかも、そのデータを開示するよう求めても、メーカーの拒否のために開示は実現していません。

都合の悪いデータは開示を拒否し、否定する根拠にもならないような実験結果を並べたてて「問題なし」とし、有意の関連ある疫学データは操作・改ざんする。こうした無茶苦茶な対応をしなければ、もはや因果関係を否定できなくなったということでしょう。いよいよ国もメーカーも追詰められているようです。

いずれ、メーカーも国も、学者・専門家も、タミフルと突然死、異常行動後の事故死などとの関連は認めざるを得なくなります。この点をここで断言いたします。

十分に関連があるにもかかわらず、「因果関係なし」といい続ければ、舛添要一厚生労働大臣の「二度と薬害を起こさない行政の舵取り」は完全に反故になり、薬害は多発するでしょう。

論文をよくお読み頂き、「二度と薬害を起こさない行政の舵取り」を絵に描いた餅に終わらせることのないよう、また、被害者の早期救済が実現できるよう強く望みます。

マスメディアの方々も、薬害エイズなどで薬害の拡大に一役買った歴史を大いに反省いただき、同じ過ちを繰り返さないよう、適切な報道を心がけていただきたいと思います。

なお、一般向けには、「やっぱり危ないタミフル−突然死の恐怖」(金曜日発行)に分かりやすく解説してあります。改めて、あわせてお読みください。

参考文献

  1. Hama R, Fatal neuropsychiatric adverse reactions to oseltamivir: case series and overview of causal relationships. The International Journal of Risk & Safety in Medicine 20 (2008) 5-36. 原文全文正誤表(英文) 翻訳完全版

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