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 高コレステロールの基準が「220以上」から「240以上」に変わりそうだと、先日報道された。健康診断の度に高いと言われたり、コレステロールを下げる薬を飲んだりしている人は「アレッ」と思われただろう。
 だれもが健康でいたい。そのためには栄養が大切、これは常識だ。だが、その詳しい内容となると千差万別で、一見常識でも、実は非常識がまかり通ったり、断片的な知識が一人歩きしたりすることもある。時々きちんとした点検が必要と思う。
 そこできょうは「栄養」がなぜ重要なのか、原点に戻って考えてみたい。病気にならない、薬に頼らないですむ方法が、究極の「薬を最もうまく使う方法」だからだ。栄養の正しい知識は、感染症や糖尿病だけでなく、アレルギーやがんに対しても優れて有効な「薬」である。
 おさらいになるが、人の体は、外敵からだけでなく、自分の体の中にできた異物からも身を守るために、炎症反応や、免疫などいろいろの防御機構を備えている。そして、最もよい体調を保つために血管、神経、ホルモン、酵素などが実にバランスよく、速やかに反応する。
 このような機構をつくり出しているのが、体の各臓器の細胞。この細胞が活発に働くには、丈夫な構造とエネルギーが必要だ。車の安全走行に、丈夫な車体や部品と、良い燃料が必要なのと同じだ。
 人にとって最もクリーンで効率のよい燃料がぶどう糖。その原料となるのが炭水化物だ。
 そして、体の構造の原料となるのがたんぱくと脂肪(油脂やコレステロール)である。この2つから丈夫な細胞膜や細胞の内部構造、代謝に必要な酵素類、血液成分などが作られる。
 炭水化物、たんぱく、脂肪、これらが3大栄養素である。
 栄養素というと、すぐビタミンやミネラル類を連想する人も多いが、市販の代表的な健康ドリンクのアミノ酸(たんぱくの原料)はせいぜい2グラム、鶏卵1個に含まれるたんぱくの4分の1に満たない。ビタミンは1日必要量の数倍〜10倍入っているが、過剰なビタミンは尿に排泄(はいせつ)されるだけ。飲んだ全部が使われて活力が増すわけではない。
 3大栄養素を、食事を通じてバランスよくとれば、ビタミンやミネラル類も自然に入る。あくまでも3大栄養素が大切だ。

 

薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎