(2014.01.29号-2)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No166

HPVワクチン(いわゆる「子宮頸がん」ワクチン

勧奨接種再開は極めて危険

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)  浜 六郎

2014年1月20日に開催された厚生労働省の合同会議(注:以下、合同会議)は、HPVワクチン(いわゆる「子宮頸がんワクチン」)の接種後に発生している広範な疼痛や運動障害は心身の反応であるとほぼ結論しました。次回(2月予定)には報告書案を取りまとめて、「再開」を強く打ち出す可能性が迫ってきています。

どのような実態になるか未知の害を、簡単に「心身反応」として葬り去ろうとする合同会議の議論を徹底的に分析して批判しました。

以下はその要旨です。詳細は本文(pdf)を参照ください。

HPVワクチン:合同会議審議結果に対する批判(要旨)

厚生労働省合同会議は、HPVワクチン接種後に発生している広範な疼痛や運動障害はワクチンの成分が原因ではなく、注射時の疼痛刺激や不安が惹起した心身の反応であるとほぼ結論した(本文参照)。その根拠として、単一の疾患として統一的に説明ができないこと、関節リウマチなど自己免疫疾患等は、ワクチンとの因果関係を示すエビデンスは得られていないこと、発症メカニズムとして、①神経学的疾患、②中毒、③免疫反応、④心身の反応が考えられるが、①から③では説明できず、④心身の反応によるものと考えられる、としている。この考えに対して批判を加えた。

  1. 合同会議は、新規の薬害の可能性のある問題への対処ができていない:HPVワクチンはランダム化比較試験で適切な害の評価がされていない。原因が一つならば起きる疾患も単一というものではなく、様々な病気の可能性が常にある。自己免疫疾患と、それに関連して生じる神経系疾患の可能性を考えて対処が必要である。安全性への懸念は極めて大きい。
  2. 疼痛がきっかけで心身の反応が起きるなら、疼痛が強い製剤で「心身の反応」も強く、高頻度になるはず。しかし、そうなっていないなら、この考え方は矛盾している。
  3. 自己免疫疾患との因果関係に関する海外の論文は、システマティックレビューも観察研究も、対照群の選び方、頻度の求め方が間違っている。システマティックレビューをしたランダム化比較試験はすべてアジュバント(入り)製剤を対照群に用いており、害評価は不可能。観察研究は、「健康者ワクチン接種効果」の影響以上の著しいバイアスがあり、罹患率でなく有病率が報告されている。それでも一つの観察研究では自己免疫疾患のうちレイノー病、ベーテェット病、1型糖尿病が有意に高率であった。
  4. 発症メカニズムについて:②中毒(アジュバントによる組織傷害性病態)、③免疫・炎症反応(組織傷害に引き続く自己免疫・炎症性病態)、さらには、①神経疾患(自己免疫性神経疾患および血栓塞栓症に伴う疼痛や神経系異常)の可能性が高い。しかし、合同会議は、現実に起きていることを正確に把握・分析しないまま、間違った論理でそれらの可能性をすべて否定し尽くし、④心身の反応と結論しようとしている。合同会議が言う「心身の反応」とは、身体化障害や転換性障害(以前ヒステリーと呼ばれていた病態)である。医師が自分の知識の及ばない疾患・病態に遭遇した場合によく用いる病名であり、これを用いることは「難問に答えることができない」と自らの無能を認めたに等しい。
  5. 接種後1か月以降発症例/慢性経過例は因果関係が乏しい、と、従来の知識をそのまま当てはめ、「●●は起こりえない」を前提にすれば、新たな害の発見は不可能である。

市民患者が「ほんまもん」の情報を持つことが真の改革につながる
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