(2009.09.13号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No133

タミフル服用後、呼吸悪化後の死亡が多い

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)  浜 六郎

『薬のチェックは命のチェック』速報版No129(8月25日号)で、8月17日発表分までの症例について分析した結果を詳報しました。

その後、9月8日までに死亡した11人以外に、重症化してICU管理となったり、人工呼吸器がつけられたりした人は、脳症/脳炎例は除いて、少なくとも23人いました。急変に備えてICU管理となった1人を除く22人中10人にタミフルが処方されていました。人工呼吸管理を開始後にタミフルを使用し、呼吸への影響は評価不能な2人を除く8人中6人はかなりタミフルの影響が疑われる例でした。

5人はタミフルの関与がかなり疑われる

タミフルを服用していて亡くなった7人についてみてみましょう。一部は繰り返しになりますが、タミフルを服用していて亡くなった7人のうち、タミフル服用と死亡との関係がかなり疑われる5人についてまずみてみましょう。

3人はタミフルによる突然死か?

30代の女性は、睡眠中呼吸抑制で突然死した可能性が強く疑われます(詳しくは速報No130改訂版参照)。タミフルを服用し、翌日の夜中(日付では2日後の午前1時半ごろ)に急変して、その後呼吸停止し、医療機関に搬送され、4:03に死亡。タミフル服用後のおそらく睡眠中であったと思われますが、急変し呼吸停止した突然死でした。もともとてんかんがあったとはいえ、それ以外には病気はなかった人です。てんかんの治療のために使われる抗けいれん剤の多くは呼吸抑制作用があり、タミフルの併用で呼吸抑制をより起こしやすくなります。睡眠中突然死の可能性が非常に高いと考えられます。

70代男性も、おそらく睡眠中呼吸抑制による突然死でしょう(詳しくは速報̺127参照)。もともと肺気腫(肺から空気が出て行きにくいために呼吸困難になる病気)と糖尿病があり、透析を受けていました。8月16日に38℃の発熱、17日午後1時ころ入院。タミフルなどが使用されましたが、18日午前6時20分、容態急変にて死亡。死因は急性気管支炎による肺気腫の悪化とされました。

タミフル服用後、未明(朝6時すぎ)に急変し亡くなられたので、睡眠中に呼吸が抑制されて死亡したという可能性を考えざるをえません。

もう1人の70代の男性も、呼吸抑制による突然死が疑われます。基礎疾患として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のひとつ、肺気腫のために在宅酸素療法を受けおり、糖尿病もありました。発熱し、ある日の朝インフルAと診断され、タミフルが処方されましたが、その日の夜8時に死亡が確認されたとのことです。詳細は不明ですが、入院中にもかかわらず死亡にいたる経過が書かれていないことから、気が付いたときには死亡していたという可能性があります。この場合には、タミフルによる突然死の可能性があります。

2人はタミフルによる遅発性反応か?

50代男性と、60代男性は、どちらも遅発性の反応による多臓器不全が悪化した可能性が疑われます。

50代男性は日本で始めての亡くなった透析中の人です(速報No126参照)。透析後にタミフルを使用。その後呼吸苦が出現し.2日後の未明に意識が低下し多臓器不全となりました。透析中のため、タミフルが蓄積し、遅発型反応としての多臓器不全を起こした可能性があります。

60代男性は、8月21日、肺気腫で入院。25日検査でインフルエンザと診断されタミフル開始し、翌日精密検査で09Aインフルエンザが確定し、解熱しました。31日心疾患悪化のため転院し、9月1日に急変。人工心肺装置が使用されましたが、9月2日に亡くなりました。死因は劇症型心筋症の疑いでした。

死因の劇症型心筋炎は、基礎疾患の慢性呼吸器や慢性心不全とは無関係と考えるべきで、ある種の多臓器不全のひとつと考えられます。心疾患が悪化したのは、タミフル5日分の終了後と考えられます。解熱剤の関与は不明ですが、少なくとも、タミフルによる多臓器不全が悪化した可能性がありうると考えます。

2人の死亡をタミフルは防止できず

60代女性は、27日発熱。咽頭痛や咳、鼻汁があり、28日はき気と呼吸困難が加わり近医受診。検査で陰性でしたが入院し、人工呼吸管理が実施され、タミフルが開始されましたが、29日0:40に亡くなりました。死因は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と診断されました。

人工呼吸管理が開始されてからタミフルが用いられましたが急激な経過で亡くなりました。したがって、タミフルは死亡を防止できなかったといえるでしょう。

もともと消化器がんの手術後で肺に転移があった方ですので、抗がん剤やステロイド剤が使われていた可能性があります。また、はき気と呼吸困難で近医を受診するまでに、非ステロイド解熱剤が使用されていなかったかどうかについても確認が必要と思います。

90歳男性は、もともと非結核性抗酸菌症による呼吸不全のため入院中でしたが、栄養状態悪化し、中心静脈栄養が実施された後発熱しました。検査でインフルエンザと診断されタミフルがしようされ、3日後に亡くなりました。

人工呼吸管理がされたとは記載されていませんし、タミフル服用後から死亡までの経過がまったく不明ですので、死亡への関与は不明ですが、いずれにしてもタミフルが死亡を防止できなかったといえるでしょう。

タミフルの使用が不明/不使用で亡くなった4人

なおタミフルを服用せずあるいは、タミフルの服用が不明で亡くなった4人は、非ステロイド解熱剤の影響を考慮する必要があるのではないかと思われます。

少なくとも詳しい調査が必要でしょう。


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