「いま医薬品を見直そう」 シリーズ

 

  

 

第22回 フルクトース、キシリトールは危険
      特に糖尿病患者では危険が大

  

1998年7月15日

 

【動物試験で糖尿病性神経障害】
 最近見たキネダックの動物試験論文中、気がついた重要なことをまず紹介する。その論文は「ストレプトゾシン処理ラットにおける糖尿病性神経障害の発症に対する、高フルクトース含有餌とアルドース還元酵素阻害剤ONO-2235の効果」と題するもの。ストレプトゾシン処理ラットとは、人工的に作った糖尿病ラット。ONO-2235はキネダック。
 72%のフルクトースを含む餌を四週間人工糖尿病ラットに投与すると、同%のグルコースを含む餌を投与したよりも神経組織のソルビトールの含量は2.1倍、フルクトース含量は2.9倍、グルコース含量も一・六倍に増加した。そして、運動神経伝導速度が32m/秒から28m/秒に低下し、人工的な糖尿病性神経障害を起こすことができる。人工的に糖尿病にしなかった正常のラットでは、フルクトースやソルビトールは増加しなかった。

【糖尿病に好都合とされるが…】
 フルクトースは、その代謝はインスリンに依存しないということから、糖尿病には好都合とされ、添付文書にも適応症として「糖尿病および糖尿病状態時のエネルギー補給、注射剤の溶解希釈、薬物中毒、アルコール中毒など」が記載されている。しかし、この動物実験では、フルクトースが糖尿病のラットに確実に神経障害を起こしている。
 1997年6月、高カロリー輸液によるアシドーシスによる死亡例に関する緊急情報が出た。厚生省情報では、これは全面的にビタミンB1不足が原因とされた。
 ビタミンB1不足もさることながら、フルクトースとキシリトール入りのトリパレン(大塚)が特にアシドーシスを起こしやすいことを、TIP誌(1997年7月)では取り上げ、フルクトースと5炭糖(キシリトール)の危険性を警告した。
 以下にその抜粋を紹介する。詳細は原文を参照してほしい。

【欧米では使用されない】
 フルクトースや5炭糖の代謝は、インスリンに依存しないなどの点が長所とされたこともあるが、重篤なアシドーシスが生じるために、既に欧米ではほとんど使用されなくなっている。
 キシリトール液はほとんどの国で発売されていないし、フルクトースも、ブドウ糖あるいは乳糖不耐性の患者に対してのみ適応が認められているに過ぎない。ニュージーランドではフルクトースもキシリトールも使用されていない。
 AMAの医薬品評価集には、フルクトースは、デキストロース(D-グルコース)以上の長所は何もなく、しかも欠点はいくつかある。デキストロースよりも高価で、急速に静注すると乳酸や尿酸の濃度が上昇する。乳酸アシドーシスは重症患者で生じやすい。フルクトース不耐性(アルドラーゼ欠乏症)の人では、非常に重篤な反応(低血糖、嘔気、嘔吐、振戦、昏睡、痙攣)を生じることがあるので禁忌、などと記載されている。
 糖尿病以外の患者でも悪影響を受ける。内科系のICUにおける、10%グルコースとの比較臨床試験で、10%フルクトース群だけが血中の乳酸濃度の上昇とBEの低下を認めている。キシリトールでは、点滴静注中、種々の型の脳障害が認められ、死亡例も生じている。蓚酸カルシウム結晶と思われる無数の結晶が、大脳の細動脈や腎臓の近位および遠位尿細管に認められた。
 フルクトースや5炭糖キシリトールは危険であり、特にその適応とされている「糖尿病患者」で危険が高い。臨床現場では使用すべきでない。承認取り消し・販売中止とすべきである。

参考文献
医薬品・治療研究会、高カロリー輸液時の重篤なアシドーシス、TIP「正しい治療と薬の情報」、12巻、67-69頁、1997年