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 先週の「精神安定剤」には、様々なご質問やご意見をいただいた。「『不安を増す危険』とあったため身内がパニックに陥った。対処策がないと、患者は救われない」との抗議もあった。

毎回は書けないが、薬に関して、忘れないで欲しいことがある。薬剤には危険はつきものだが、すべての人に起きるわけではない。抗不安剤が適切に使用されて、治療がうまくいっている人もある。だが、依存を特に招きやすい薬剤があり、相当に乱用されている実態も、是非知ってほしかった。

最も多かったのは「異常を感じて医師に訴えても『大丈夫。軽い薬だ』と言われるだけ。どうしたらよいかという質問だ。

相談に共通しているのは、薬にはよい面だけではなく危険な面があると言う事が知らされていない点だ。よい面だけが強調されていると、危険な側面を知ったとき「パニック」に陥りかねない。

薬の副作用、それが自分には現れていないかなどの質問は、本来、医師や薬剤師に聞くべきことだ。だが、なかなか聞けない。聞いても説明してくれない事も多い。質問の背景には、そのような実態がうかがえる。説明したくても時間がとれない現場の悩みもある。変えなければならない問題は山積みだ。だが、勇気を出して主治医や薬剤師に聞いてみて欲しい。

安定剤を飲んでいて、今は症状が安定している人や、ごく少量で量が増えていない人は、まず落ち着いて欲しい。

その上で、もともと飲むきっかけになった原因をよく思い出して、見直していただきたい。量も種類も増えてきた人には、これはより大切だ。例えば、新しい職場や学校など環境の変化、受験の失敗、事業の行き詰まりなどで不安や不眠になり、使用している人も多い。医師も気軽に処方する。

だがこういった他人にも十分理解できる日常的な不安や不眠には、薬は不要だ。外国の説明書や教科書には、そうはっきり書かれている。次に、効き目が早く目覚めがよいことを特徴にしているものは、依存になりやすいので避ける。仮に一時的に安定剤の助けを借りたとしても、短期に。1日も早く根本的な不安の原因解決に努め、薬から抜けられるように医師と相談を。

薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎