PPA等交感神経刺激剤を含有する製剤は使用中止を

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 エール大学の「フェニルプロパノールアミン(PPA)と脳出血の危険性」と題する最新の研究報告を受けて、FDAではPPA(交感神経刺激剤の一種)を含有する製剤の販売を中止するように11月6日、製薬企業に対して要請した。この研究ではPPAを使用した女性において、脳出血の危険が2倍(食欲低下剤として使用すると16倍)高くなることが示されたものである。そして、脳出血の危険性は極めて低いけれども、だれに出血が起きるか予測不可能なこと、代替薬剤があること、使用目的の病気の程度から考えて危険性は許容できないことなどから、上記のような措置を講ずることにした。

 調査結果の概要・・女性では脳出血の危険が2倍
 調査では、18歳から49歳のくも膜下出血や脳内出血(両者合わせて脳出血)で入院した患者(症例)702 人と、1症例に対して約2例ずつ1376人の対照について、脳出血発症前3日間に使用したPPA含有製剤を調査した。他の脳出血の危険因子で調整すると、食欲低下剤(やせ薬として使用)をした女性はの危険(オッズ比)16.6 (95%信頼区間:1.5 〜182.2)、何らかのPPA含有製剤を使用した女性のオッズ比 2.0(95%信頼区間:1.0-3.9)であった。男性でも関連は否定されず、FDAは男性も危険性はあり得るとした。

 ダン・リッチだけでなくフスコデ等咳止めも危険
 今回はPPA含有製剤だけが対象だが、同時に交感神経刺激剤はすべて問題である。PPAは、ノルエフェドリンとも呼ばれ、中枢作用(β作用)が少ないが、基本的には(メチル)エフェドリンの類似物であり、末梢血管収縮、血圧上昇作用がある。メチルエフェドリンはフスコデ等に含有されている。

 脳出血だけでなく心筋梗塞等、梗塞性疾患の危険も
 今回は、脳出血の危険に焦点が当てられたが、心筋梗塞や脳梗塞、腸間膜動脈梗塞、腎不全(腎梗塞による)なども交感神経が刺激されて同様に問題になる。実際、心筋梗塞や脳梗塞の報告がある。筆者が相談を受けた例では、腎不全と腸間膜動脈梗塞による腸管壊死の例がある。

 若年者よりも、高齢者でより危険
 今回若年者だけが対象とされたのは、文献的報告が若年者に偏っていたためだが、これは滅多におきない脳出血が若年者でPPA含有製剤を使用後に生じたため注目されたためであろう。高齢者ではこれらの罹患率がもともと高いため、PPA等交感神経刺激剤により増加する血管障害の患者数は若年者よりも圧倒的に大きいはずである。日本では厚生省は規制をする予定がないようだが、若年者だけでなく、高齢者でも、とくに使用しないようにする必要がある。

 代替薬剤は?
 感冒による鼻づまりには抗ヒスタミン剤は効果がなく基本的には対症療法不要である。鼻づまりの症状が持続する場合には、診断が適切であったかどうか再検討を要する。鼻水、鼻づまりの原因が、花粉症などアレルギーであれば抗ヒスタミン剤単独(あるいは必要ならステロイド剤局所使用)で有効であり、PPA含有製剤や血管収縮剤の局所製剤に対する代替剤となる。さらには、慢性副鼻腔炎のうち、抗生物質が必要なようなものでないかどうかの鑑別が必要である(「呼吸器疾患治療ガイドライン」(近刊予定)参照)。
(詳しくはTIP誌2000年11月号参照)

FDA、フェニルプロパノールアミン

(phenylpropanolamine=PPA)について

公衆衛生勧告を発表

FDA Talk Paperより
(補足:FDA=米国食品・医薬品管理庁 日本でいう厚生省のようなもの)
FDAは現在PPAをすべての医薬品から取り除くための作業に入っています。また、すべての製薬会社に対して,PPAを含む製品の製造差し止めを要求しました。

FDAは本日(2000年11月6日)PPAによる脳内出血の危険性についての公衆衛生施策に関する勧告を発表しました。
PPAは多くの一般市販薬剤(OTC)や、かぜや咳に処方される充血除去剤などの薬剤、また市販のダイエット用製品にも含まれています。
これらの製品の引き起こす害作用が報告され、この物質は脳内出血を引き起こす可能性があるとの重要性が指摘されました。これらPPAを含む製品の製造者はFDAと共に危険の増加が存在するかどうかを明確にするための共同研究計画を立てました。
エール大学は女性における脳卒中とPPAの使用との関連に対する研究を実施し、体重のコントロール、または鼻詰まりのためにこの薬品を使っていた女性に使用開始から3日以内に脳内出血の危険が増加したことを認め、男性についても同様に危険にさらされている可能性があることを示唆しました。
10月19日にはPPAの使用における安全性を審議するため、一般市販薬諮問委員会が開かれ、同委員会は今後もPPAを使用しつづけることは安全ではないというエール大学の研究の結論を検討しました。
FDAはたとえPPAによる脳内出血の危険が低くても、使用目的からすると、この高い危険の増加はこの薬剤の使用を正当化できるものではないとしています。
消費者はPPAに代わる一般市販薬や処方薬について医師や薬剤師と相談するようにしてください。

公衆衛生勧告、脳卒中の研究結果とPPAのこれまでの経緯についてはFDAのホームページ www.fda.gov/cder/drug/infopage/ppa/default.htmを参照してください。

 

FDA医薬品情報

PPAの安全性についてのQ&A

Q:FDAが今回どんな活動を発表したって?
A:FDAはフェニルプロパノールアミン(phenylpropanolamine=PPA)を含む医薬品を市場に出している会社に、自発的に販売を止めるように勧告しました。同様に消費者にもPPAを含む医薬品の使用に伴う危険性を示しました。

Q:PPAってなに?
A:PPAとは、鼻詰まりを治す目的で医師が処方する薬剤や一般で市販されている充血除去剤として販売されている薬剤に含まれています。食欲を抑制する薬剤としても販売されています。

Q:何年も使用されてきたのになぜ危険なんですか?
A:2000年5月11日、FDAにエール大学からPPAが脳内出血の危険を増加させるという研究報告が届きました。
PPAはこれまで何年間にもわたって使用されてきましたが、ごくまれに脳内出血が起こっていました。エール大学の研究では、PPAを使用していた人で脳卒中を起こした人はPPAを使っていなかった人よりも多いということが今回明らかになりました。
脳内出血を起こす危険性は非常に低いのですが、脳卒中という病気の深刻さと、だれに危険があるかわからないということから、FDAはこれを重大なこととしてとらえています。
FDAに寄せられる数々のPPA使用による脳内出血の報告やエール大学の研究報告から、PPAによる利益(軽い鼻詰まりの緩和や食欲の抑制など)よりもその危険性のほうがはるかに上回るということがわかったので、FDAは消費者にPPAを含む薬剤はこれ以上使用をしないように勧告することにしました。

Q:PPAが入った製品を使うとより危険が起こりやすい人はどのような人ですか?
A:エール大学の研究では脳内出血の危険はほとんどの場合女性に起こるとしています。もちろん男性にも危険はありますが。

Q:どんなくすりにPPAが含まれているのですか?
A:鼻腔充血除去剤や咳/かぜ用のくすりとしてはいくつかの処方薬や市販薬に、また、体重コントロール用の市販薬にもPPAが含まれています。

Q:私の家族はずっとPPAを含んでいる製品を使いつづけています。危険でしょうか?
A:エール大学の研究では、PPAを含む薬剤をダイエットや鼻詰まりのために使っていた女性では薬剤使用開始から3日以内に脳内出血の危険が増加すると報告しています。たとえその危険の確率がとても小さいにせよ、いますぐそのくすりをやめて、それに代わりうるくすりを使ったほうがいいでしょう。

Q:PPAの入ったくすりの代わりになるような他のくすりはありますか?
A:はい。市販の製品でもPPAを含まないものがあります。どのようなものを使用できるか医師または薬剤師に相談してみてください。

Q:一般市販薬にPPAが入っているかどうかは、どうすればわかりますか?
A:PPAを含む薬剤のラベルには“フェニルプロパノールアミン”と成分表に記載されているはずです。それでも心配なときは、薬剤師に相談してPPAを含んでいるかどうか確認しましょう。(注:他にメチルエフェドリンやエフェドリン、ノルエフェドリン等が含まれているものも同じように危険と考えておいて下さい。)

Q:医師に処方されるかぜぐすりや咳止め、鼻腔充血除去剤にPPAが含まれているかどうかは、どうすればわかりますか?
A:もしあなたにかぜぐすりや咳止め、鼻腔充血除去剤が処方されているなら、薬剤師や医師に、あなたのくすりにPPA等が含まれているかどうか確認してください。

Q:くすりについての問い合わせはどこにすればよいのですか?
A:1−888INFO FDA (国番号1+1−888−463−6332)に電話してください。

Q:PPAによる副作用があった場合は、どうやって知らせればいいのですか?
A:FDAは深刻な害反応(副作用)に気づいたひとならだれでもMedWatchレポートに報告してもらえるよう応援しています。

有害事象(副作用)を報告するには:

1.FDAのホームページを利用する
www.fda.gov/medwatch の"How To Report"をクリックする。

2.国番号1+1−800−332−1088に電話してください。

 

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