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書評コーナー

季刊誌53号より

新型インフルエンザパンデミックの黙示録―一人の医師の論理学的考察

新型インフルエンザパンデミックの黙示録―一人の医師の論理学的考察

■羽田 囘(著)/せせらぎ出版
 ■ISBN-10: 4884162129
 ■ISBN-13: 978-4884162122
 ■21.2 x 15.6 x 2.8 cm 370ページ 価格3,619 円(税別)


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著者の羽田囘(はだめぐる)氏は大阪府内の開業内科医である。「はじめに」の書き出し「2009年、史上四度目と喧伝されたインフルエンザの パンデミックが人類の災禍として降臨した」は、筆者が2009年のパンデミックをどうとらえていたかが垣間見える一文だ。

章立ては、第1章未知との遭遇、第2章遺伝子ワールド、第3章感染列島狂想曲、第4章WHOのパンデミック宣言、 第5章スペイン風邪の恐怖を煽る、第6章感染の拡大へ、第7章風邪とインフルエンザ、第8章高病原性インフルエンザH5N1、 第9章有識者かく語りき、第10章パンデミック終息へ、となっているが、どの章から読み始めてもいいと思う。

WHOの感染症専門家らが喧伝したパンデミックによる死者などの数字予測は大外れに終わった。 幸いに、というべきなのだろうか。このとんでもない騒動の検証はなされていない。医療の最前線にいる開業医こそ、 声を上げるべきではないか、と自ら実践した労作である。刊行は2012年12月。行政当局や専門家が流す情報に飲み込まれないために、 「新型インフルエンザ」騒ぎがようやく収まり、一方で新たに蠢きそうな今、じっくりと本書を読んではどうだろう。(さ)