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書評コーナー

季刊誌50号より

自閉症論の原点 定型発達者との分断線を越える

自閉症論の原点

■高岡 健 著 /雲母書房
 ■ISBN-10: 4876722250
 ■ISBN-13: 978-4876722259
 ■19.2 x 13.4 x 2.2 cm 221頁 価格1800円(税別)


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まえがきの『自閉症こそが人間存在の原点を照射しているのであり、「正常」に発達を遂げる過程は、 むしろ原点からの逸脱として位置づけられるべきではないか』という一文を読んで、目からウロコの心境になった。

法律や精神科関係の本には「発達障害」という用語が氾濫するが、著者は、それを「原点の近傍に位置する自閉症者と、 原点から遠ざかり大切な何ものかを失っていく定型発達者という、相対的な違いが残るだけ」という。 優劣の判断は入らない。自閉症の人々の純真さと特異な才能を賞賛するだけでは、互いの存在そのものを容認することにはならない。

本書は、ショーン・ペン扮する知的障害のある自閉症者がわが子の親権を巡って裁判する映画「アイ・アム・サム」や、 トルストイの「イワンのばかとそのふたりの兄弟」などを引用しながら、自閉症について一般の人への解説を工夫している。 自閉症が「発見」され、知的障害の有無で自閉症を区別する流れがどのような状況で、いつ頃登場してきたか、日本の 「発達障害者支援法」は国連原則で定められた当事者からの意見聴取がなされないまま成立していること、など、 入門書としてじっくり読んでほしい。(さ)