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書評コーナー

季刊誌49号より

世にも奇妙な人体実験の歴史

世にも奇妙な人体実験の歴史

■トレヴァー・ノートン 著、赤根 洋子 訳 /文藝春秋
 ■ISBN-10: 4163754407
 ■ISBN-13: 978-4163754406
 ■20 x 13.8 x 3 cm 379頁 価格1800円(税別)


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原書の副題は「自己実験者への賞賛」だろうか。本書に登場する科学者の多くが自分を実験台にしている。

たとえば、米国の研究者デビッド・クライドは、マラリアワクチンを作るために、マラリア原虫を人体に注射して抗体を作る実験で、 自身も被験者になった。患者がどんな状態になるのかを身をもって正確に知るためには、副作用があった場合、自分ならはるかに正確に 説明できると考えたからだ、という。同じように自分を実験台にして梅毒と淋病にかかってしまった英国の医師ジョン・ハンター。

今ではごく一般的な医療行為である心臓カテーテルを最初に人間で試したのはドイツの医者ヴェルナー・フォルスマン。 腕の血管を切開して心臓まで通す実験は成功したのだが、1929年に公表されると大騒動になり、医学会ではサーカスの芸当扱いされ 疎んじられたが、彼は、決して万全ではない環境の中でさらに自己実験を続けた。1955年、彼の功績にノーベル生理学・医学賞が授与された。 最近やウイルスにまつわる話も多い。

自己実験者たちは、自分の研究のためには他人を犠牲にすることをためらわない科学者とは、真逆の姿勢であると思う。(さ)