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書評コーナー

季刊誌44号より

放射線被曝 CT検査でがんになる

放射線被曝 CT検査でがんになる

■近藤 誠著/亜紀書房
 ■ISBN-10: 4750511137
 ■ISBN-13: 978-4750511139
 ■18.6 x 13 x 2 cm 216頁 価格1300円(税別)


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広島・長崎・ビキニを経験している日本人が、どうしてこうまで被曝(今回の福島の原発事故についても) に鈍感なのかを、近藤氏は「愚民化政策」にあったと喝破している。政府や電力会社が、「原発は安全だ」と 国民を洗脳した政策とそっくり同じように、日本放射線学会を中心とする専門家たちが、 検査被曝に危険はないと国民を洗脳してきたことをエビデンスに基づいて示している。

2004年2月に読売新聞が、英国の医学雑誌Lancetの記事を引用し、日本は医療被曝大国であることを暴露した。 その直後に開かれた医療放射線の安全利用のフォーラムが、電力会社が出資した民間シンクタンクによって開催され、 キーメッセージは「線量はわずかで安心」であったこと。また、本書の元となった文藝春秋2010年10月号の 「CT検査でがんになる」に対して、医者や学会からの反論はなく、原子力産業OBの団体から抗議があったことを明らかにしている。 原子力ムラの危機感を如実に示すエピソードだ。「テレビ番組に準レギュラー的に登場して安心感を振りまく専門家には、 信用できる人は一人もいないと考えておくのが安全です」という最後の言葉には強く同意する。(き)